月曜夜の号をお届けします。トランプ米大統領が日曜夜に米・イラン合意を「いまや完成した」と表明し、ホルムズ海峡が早ければ今週中にもタンカーへ再開放される見通しとなったことを受け、週明けの市場はリスク選好に傾いています。米株先物は上昇、原油は2カ月ぶり安値へ一段安となる一方、ドル安を背景に金・銀はむしろ急騰するという、和平局面らしからぬ強さもみせています。本号は、(1)米株のリリーフラリー、(2)2カ月ぶり安値の原油、(3)逆行高となった金・銀、(4)本日開幕のG7エビアン・サミット、(5)和平の最大の波乱要因として残るイスラエル、の5本に、明日に迫った日銀会合の前夜の地合いを添えてお伝えします。なお中東情勢は流動的で、署名(19日)までの数日間は緊張が再燃するリスクが残る点にご留意ください。
米株、和平「完成」でリリーフラリー — 週明けはナスダック100先物が2.2%高、S&P500先物1.3%高、ダウ先物1%高
トランプ大統領が15日未明(日曜夜・米東部時間)に自身のSNSでイランとの合意が「いまや完成した」と表明したことを受け、週明けの米市場はリスク選好に傾いています。寄り付き前の段階で、ハイテク主体のナスダック100先物が約2.2%高、S&P500先物が約1.3%高、ダウ先物が約1%高と、そろって上昇しました。先週は12日にスペースXが史上最大のIPOで上場初日に約19%高(終値161ドル前後)と好発進し、主要3指数も週を通じて堅調に推移しており、今回の和平進展がその流れを引き継いだかたちです。ホルムズ海峡の再開放と地政学リスクの後退は、エネルギーコストの低下を通じてインフレ鈍化と企業採算の改善につながりやすく、株式には追い風です。ただし16〜17日にはウォーシュ新議長の初采配となるFOMCが控えており、5月のCPI・PPIが高止まりするなかで年内利下げ観測が後退していることを踏まえると、金利を巡る警戒が上値を抑える可能性もあります。なお米株式市場は19日(金)のジューンティーンス(奴隷解放記念日)で休場となるため、今週は短縮取引です。
出典: Yahoo Finance / CNBC
原油、ブレント83ドル前後へ一段安 — 2カ月ぶり安値、ホルムズ「今週にも再開放」で供給途絶プレミアム剥落
原油市場は週明けに一段と水準を切り下げ、北海ブレントは1バレル83ドル前後と約2カ月ぶりの安値圏に沈みました。前号(85ドル前後)からさらに下押しした格好で、2026年の高値からは2割超の調整となります。引き金は、合意の「完成」宣言とともにトランプ氏がホルムズ海峡の無料開放と米海軍による封鎖の即時解除を指示したことです。海峡は早ければ今週中にもタンカーへ再開放される見通しで、これまで価格に上乗せされてきた供給途絶リスクが急速にはがれています。もっとも、機雷除去やタンカーの保険・運航体制の回復には時間を要し、輸送が平時の水準に戻るには数カ月かかるとの見方が大勢です。供給正常化が円滑に進めば原油はさらに水準を切り下げる余地がある一方、19日の署名完了までは部分的に緊張が残るため、戻り売りと押し目買いが交錯しやすい地合いです。エネルギー安は世界のインフレ鈍化要因となる半面、産油国の収益やエネルギー関連株には逆風となります。
出典: Bloomberg / Trading Economics
金・銀は逆行高、金は3日続伸で4,300ドル台回復 — ドル安が押し上げ、銀は1オンス70ドル台へ4%高
和平進展でリスク選好が強まる局面ながら、貴金属はむしろ買われています。金(ゴールド)は週明けに前日比約2.8%高の1トロイオンス4,330ドル台へ上昇し、3営業日続伸となりました。前号時点では4,100ドル台で神経質としていましたが、原油安によるインフレ・利上げ警戒の後退と、合意を受けたドル全面安が、利息を生まない金の追い風となった形です。銀はさらに値動きが大きく、約4%高の1オンス70ドル台へ水準を切り上げました。背景には、各国中央銀行による継続的な金購入や、地政学・財政の不確実性を見込んだ中長期の押し上げ期待もあります。16〜17日のFOMCでは政策金利の据え置きがほぼ確実視される一方、同時公表されるドットプロット(金利見通し)と新議長の会見トーン次第で、ドル・金利・貴金属が大きく振れる可能性があります。目先の和平による調整圧力よりも、ドル安と構造的な実需が優勢となっているのが現状です。
出典: Trading Economics / Yahoo Finance
G7エビアン・サミット開幕 — ウクライナ・イラン・AI・世界の不均衡が議題、共同声明は2年連続見送りの公算
主要7カ国(G7)首脳会議が15日、フランス・レマン湖畔のエビアンレバンで開幕しました(17日まで)。6回の作業セッションで、ウクライナの和平と安全保障、中東(イラン・ホルムズ)情勢、金融の安定を脅かす世界経済の不均衡、そして急速に台頭するAIなどが議論されます。議長国フランスは、昨年に続き今年も包括的な共同声明の採択を見送り、分野別の成果文書を積み上げる慎重な運営をとる公算が大きいと報じられています。経済面では、7月24日に迫る米国の追加関税の期限、中国によるレアアース輸出規制、産業の過剰生産能力の是正などが火種です。米国がNATO向けの航空機・艦艇の関与縮小を通告したことを巡る同盟国との摩擦も伝えられ、結束より対立が前面に出やすい会合との見方もあります。中東和平の覚書(MOU)署名の段取りや対中通商の行方は、コモディティ・為替・資源株に波及しうるだけに、市場も議論の中身を注視しています。
出典: European Council / U.S. News(Reuters)
和平の波乱要因はなおイスラエル — トランプ氏、ネタニヤフ氏を「非常に難しい男」と評し「核合意なければ攻撃再開も」
合意は「完成」とされたものの、署名は今週金曜(19日)とまだ数日先で、最大の不確定要素はイスラエルの出方です。トランプ大統領は15日、ネタニヤフ・イスラエル首相を「非常に難しい男」と評し、イランとの核を巡る合意が結ばれなければイランへの攻撃が再開される可能性もあると述べたと伝えられています。ネタニヤフ氏は「イスラエルは今回の交渉の当事者ではない」としつつ、トランプ氏と「イランに核兵器を持たせない点では完全に一致している」と強調しています。中東では4月7日の停戦以降も散発的な応酬が続いており、先週末にはイスラエルによるベイルート南郊への空爆と、これに対するイランの弾道ミサイル発射という、停戦後で最悪の直接攻撃の応酬がありました。署名までの数日間に再び砲火が交われば、せっかく後退した地政学プレミアムが原油などに再注入されるリスクが残ります。市場が織り込み始めた「中東リスクの正常化」が確かなものになるかは、なお慎重な見極めが必要です。
出典: The Times of Israel / NPR
日銀会合前夜、ドル全面安で円も小じっかり — 明日16日に約31年ぶり利上げ観測
東京市場が引けた後の海外時間も、明日の日銀に向けた緊張が続いています。日銀は16日に政策金利を0.75%から1.0%へ、1995年以来およそ31年ぶりの高水準へ引き上げるとの観測が大勢です。週明けは和平合意を受けてドルが主要通貨に対して全面安となり、これまで160円台前半で上値の重かったドル円もやや円高方向に振れやすい地合いとなっています。焦点は利上げそのものよりも先行きで、市場は年内のさらなる追加利上げと、最終到達点として2%前後を視野に入れ始めています。利上げが円高への転換点となれば、低金利の円で資金を調達して高利回り資産に投じる「円キャリートレード」の巻き戻しを通じて、世界の流動性やリスク資産に波及する可能性があります。植田総裁は入院のため会合を欠席し、会見は内田副総裁が代行する見込みです。日米の中銀イベントが16〜17日に集中するだけに、為替・金利の変動が大きくなりやすい点に注意が必要です。
出典: Investing.com(Reuters) / Bloomberg