おはようございます。いったん和らいだかに見えた中東情勢が、再び市場の主役に戻ってきました。トランプ米大統領は9日、イランがホルムズ海峡上空で米軍ヘリコプターを撃墜したと確認し、米国は「報復せざるを得ない」と表明しました。4月以来の停戦が揺らぐとの警戒から、前日まで半導体株主導で戻していた米国株は反落し、ナスダックは1%近く下げて引けています。投資家心理は再びリスク回避に傾き、有事のドル買いでドル円は160円台、原油は供給途絶リスクの蒸し返しを意識する展開です。そして今夜(日本時間10日21時半)には、今週最大の関門である米5月消費者物価指数(CPI)が控えます。本号は中東リスクの再燃とCPI前夜の市場を中心に5本立てでお届けします。
トランプ氏、イランが米軍ヘリ撃墜と確認し「報復は不可避」 — 4月以来の停戦に動揺
中東情勢が再び緊迫しています。トランプ米大統領は9日、イランがホルムズ海峡近くのオマーン沖で米陸軍のアパッチ攻撃ヘリコプターを撃墜したと確認し、米国は「必要に迫られ、この攻撃に対応せざるを得ない」と述べて報復に踏み切る姿勢を示しました。ヘリは無人機の被弾で墜落したとされ、乗員2名は約2時間後に救助され容体は安定しています。意図的な攻撃だったかどうかは調査中とされていますが、米軍部隊への直接攻撃は、4月以降続いてきた停戦の枠組みからエスカレーションの階段を一段上ったものと受け止められています。一方でトランプ氏は、イランとの合意が「2〜3日のうちにまとまる可能性がある」とも語り、合意すればホルムズ海峡が直ちに再開されるとの見通しも示しました。イラン議会議長は「我々は外交の言葉を好むが、別の言葉ははるかに流暢に話せる」とSNSに投稿し、挑発が続けば応戦する構えをにじませています。報復の有無と規模が、当面の市場のリスク許容度を左右します。
出典: NPR / Al Jazeera
米株は反落、ナスダック0.97%安の2万5,678 — イラン報復示唆で日中急落、CPI待ち
9日の米国株式市場は反落しました。ハイテク中心のナスダック総合指数は前日比0.97%安の2万5,678.82、S&P500種株価指数は0.26%安の7,386.65で引けています。一方、ダウ工業株30種平均は86ドル高(0.17%高)の5万0,872.11と小幅に上昇し、まちまちの引けとなりました。トランプ氏がイランへの報復を示唆したとの報道を受けて、株価は取引時間中に急落する場面がありましたが、引けにかけてやや下げ渋りました。業種別では、ハイテクとエネルギーの2業種だけが下落して終え、前日まで買い戻されていた半導体株に再び利益確定売りが出た格好です。市場は、今夜発表される米5月CPIを前に積極的に買い上がりにくく、地政学リスクの再燃と高止まりするインフレへの警戒が重なって、神経質な値動きが続いています。
出典: TheStreet / Trading Economics
今夜の米5月CPI、市場予想は前年比4.2%へ — 2023年4月来の高さ、先物は年内利下げゼロを織り込み
今週最大の経済指標、米5月CPIが日本時間10日21時半(米東部時間8時半)に発表されます。ロイターのエコノミスト調査によると、市場は前年同月比で4.2%の上昇を見込んでおり、これは2023年4月以来の高い伸びとなります。前月比では0.5%の上昇、変動の大きい食品・エネルギーを除くコア指数は前年比2.9%・前月比0.3%が見込まれています。4月のCPIが前年比3.8%だったことから、一段の加速が予想される計算です。背景には、イラン紛争に伴う原油高がガソリンなどを通じて消費者物価に波及しつつあることがあります。金利先物市場は、2026年内の利下げを一切織り込んでおらず、上振れが確認されれば「より高く、より長く」金利を据え置くとの観測が強まり、ドル高や株式・債券の変動拡大につながる可能性があります。16〜17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)はウォーシュ新議長の下で据え置きが見込まれており、CPIはその地ならしとして注目されます。
出典: Kiplinger / Trading Economics
原油はブレント93ドル割れと7週ぶり安値、それでもホルムズは封鎖継続 — ヘリ撃墜で再燃リスク
原油相場は軟調です。北海ブレント原油は1バレル93ドルを割り込み、4月17日以来約7週間ぶりの安値圏で引けました。米国産WTIも5月29日以来の水準まで軟化しています。イランとイスラエルが相互の攻撃を停止し、和平交渉の進展期待が高まったことが直接の重しです。加えて、世界最大の輸入国である中国が原油輸入を2月の日量1,170万バレルから5月末には900万バレル弱まで絞り込み、在庫を取り崩して供給ショックを和らげる「圧力弁」の役割を果たしていることも、価格を100ドル割れにとどめています。ただし、ホルムズ海峡は米国とイランによる事実上の二重封鎖でなお実質的に閉鎖されており、原油・燃料・天然ガスの出荷は深刻に滞ったままです。9日の米軍ヘリ撃墜とトランプ氏の報復表明で、供給途絶リスクがいつ蒸し返してもおかしくない不安定な地合いが続いています。
出典: CNBC / Trading Economics
ドル円は160円台で介入警戒、有事のドル買い続く — 16〜17日の日銀会合に焦点
外国為替市場では、ドル円相場が1ドル160円台で推移しています。9日のドル円は160円15銭近辺と、2営業日連続で節目の160円に乗せました。米軍ヘリ撃墜を受けた中東情勢の緊迫で安全資産とされるドルに資金が向かい、米長期金利が4.42%近辺で底堅く推移したことも、利回りの高いドルを支えています。リスク回避局面でも円ではなくドルが買われる「有事のドル買い」が続き、円は上値の重い展開です。160円の節目を2日続けて試したことで、東京市場では再びの円買い介入への警戒感が強まっています。片山さつき財務相は、必要なら為替市場で行動する用意があり、米当局とも緊密に連絡を取り合っていると改めて述べました。市場の次の焦点は16〜17日の日銀金融政策決定会合で、追加利上げの観測(市場が織り込む確率は約77%)が、円安圧力を抑える鍵を握ります。利上げ見送りとなれば、政策が後手に回るとの警戒から円安が一段と進むリスクも残ります。
出典: Investing.com / Trading Economics