経済ニュースダイジェスト

2026/06/02(火)06:00 JST  |  号ID: 2026-06-02-0600

月初の市場は一転して中東リスクが再燃しました。イランが6月1日にイスラエルのレバノン攻撃を理由として米国との対話を凍結し、5月末まで進んでいた停戦合意の機運が暗転、原油は急反発しています。一方で米株はエヌビディアのPC向けチップ参入を好感し、原油高をものともせず最高値を更新しました。本号では、(1)米イラン交渉の決裂、(2)原油急反発と米金利上昇、(3)エヌビディアのPCチップ参入、(4)米株の最高値更新、(5)ドル円160円突破と6月16日の日銀利上げ観測、の5本を株式・為替・コモディティ・地政学・マクロの観点から整理します。

米イラン停戦交渉が一転決裂 — イランが対話を凍結、ホルムズ・バブエルマンデブ両海峡の全面封鎖を警告

5月末まで「合意間近」と伝えられていた米イランの60日停戦延長交渉は、6月1日に一転して暗転しました。イランは、イスラエルがレバノンで軍事作戦を継続していることを理由に、仲介者を通じた米国とのメッセージ交換を含む間接交渉を停止すると表明しました。アラグチ外相はSNSで「イランと米国の停戦は全戦線における停戦であり、一つの戦線での違反は全戦線での違反だ」と述べ、米国とイスラエルに「いかなる違反の結果についても責任がある」と警告しました。一部報道によれば、イランと「抵抗の枢軸」はホルムズ海峡の完全封鎖に加え、バブエルマンデブ海峡など他の戦線の活性化も協議しているとされます。もっとも、トランプ大統領は同日CNBCの取材に対し交渉決裂の可能性を意に介さない様子を見せ、長引く協議が「退屈になってきた」と語っており、当事者間の温度差が一段と鮮明になっています。海上輸送の要衝を巡る緊張再燃は、原油・天然ガスと海運コストを通じて世界の物価とサプライチェーンに直結する重大リスクです。

原油が急反発、WTIは5%超高の92ドル台 — 5月の▲19%から一転、米10年債利回りは4.5%へ上昇

停戦観測の後退を受け、原油相場は月初に急反発しました。米WTI原油は前日比5.5%高の1バレル92.16ドル前後、北海ブレントは4.5%高の94.98ドル前後で取引を終え、一時はWTIが7%超上昇して94ドルに迫る場面もありました。ブレントは5月単月で約19%下落し2020年3月以来最悪の月となっていただけに、ホルムズ海峡再開への期待を一気に巻き戻す動きです。エネルギー価格の再上昇はインフレ再加速観測を呼び、米国債が売られて10年債利回りは約10ベーシスポイント上昇し4.5%に達しました。2年債利回りは2025年2月以来の高水準を付けています。「停戦進展で剥落していた地政学プレミアムの再付与」と「金利上昇」が同時進行する構図であり、原油在庫や中東情勢の続報が当面の値動きの主因となります。

エヌビディアがPCチップ市場に参入 — 株価+6%・時価総額5.47兆ドル、デルは+10%、インテル・AMDは下落

エヌビディアは6月1日、台北で開催したGTCで、PC向けの新型プロセッサ(報道では「N1X」「RTX」搭載スーパーチップ等と呼称)を発表し、PCプロセッサ市場への本格参入を打ち出しました。台湾メディアテックと共同開発したCPUとGPUの統合チップで、マイクロソフトのArm版Windowsで動作し、デル・HP・レノボなどの新型Windowsノート/デスクトップに搭載され2026年秋の発売が見込まれます。発表を受けてエヌビディア株は6.2%高の224.27ドルまで上昇し、時価総額は約5.47兆ドルへ拡大しました。AIインフラ関連が連れ高となり、デルは10%超、HPは8%超上昇した一方、PC向けCPUで競合するインテルとAMDは下落しました。AIの主戦場がデータセンターからエッジ(PC)へ広がりつつあることを示す象徴的な一手で、半導体業界の競争構図に新たな変数を加えています。

米株は原油高を吸収し最高値更新 — S&P500は7,599、ナスダック27,086、ダウ51,078、テック主導のリスクオン継続

6月1日(月)の米国株は、原油急騰という逆風にもかかわらず主要3指数がそろって過去最高値を更新しました。S&P500種株価指数は0.26%高の7,599.96、ナスダック総合指数は0.42%高の27,086.81、ダウ工業株30種平均は46.42ドル(0.09%)高の51,078.88ドルで引け、いずれも取引時間中・終値ベースで最高値を付けました。エヌビディアのPCチップ発表を起点としたハイテク株高が相場全体を押し上げ、中東緊張の再燃に伴うエネルギー高・金利上昇の重しを吸収した格好です。半面、9週連続で続伸してきた株高局面でバリュエーション面の過熱感も指摘され、6月5日の米5月雇用統計など今週の重要指標を前に、地政学リスクと金利動向次第で変動が大きくなる可能性には留意が必要です。

ドル円が160円台へ — 記録的介入も5月はG10最弱、市場は6月16日の日銀利上げ(0.75%→1.0%)を8割織り込み

ドル円は6月1日に節目の1ドル160円台へ乗せ、約21カ月ぶりの円安水準を付けました。財務省が4月28日〜5月27日に約11兆7,349億円(約736億ドル)という記録的規模の円買い介入を実施したにもかかわらず、円は5月にG10通貨の中で最弱のパフォーマンスとなり、介入の効果に対する懐疑論が一段と強まっています。市場の関心は6月15〜16日の日銀金融政策決定会合に移っており、ロイター調査ではエコノミストの約3分の2が25ベーシスポイントの利上げ(政策金利を0.75%から1.0%へ)を予想、市場が織り込む利上げ確率は78〜81%に達しています。利上げ前のこの2週間は、160円台でのさらなる円安進行と再介入観測がせめぎ合う「圧力鍋」のような局面となりそうです。原油高による輸入インフレ懸念も、日銀の正常化を後押しする材料となります。

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