月曜朝の号をお届けします。週末は大きく状況が動きました。署名が目前とされた米・イラン和平合意は、イスラエルによるベイルート空爆と、それに対するイランのミサイル攻撃、さらにイスラエルの対イラン報復という応酬で、土壇場で雲行きが怪しくなっています。トランプ米大統領は「合意はあと数時間」と続行を主張する一方、署名の確報は本号時点でなお出ていません。本号は、(1)和平を揺さぶる中東情勢の急変、(2)週明けの市場が直面する綱引き、(3)本日始まる日銀会合、(4)17日にかけてのFOMC、(5)本日開幕のG7エビアン・サミット、の5本でお伝えします。
米イラン和平、署名直前で暗転 — イスラエルのベイルート空爆にイランがミサイル報復、イスラエルも対イラン攻撃で応酬激化
「日曜署名」が予告されていた米・イラン和平合意は、週末の軍事的な応酬で先行きが一気に不透明になりました。日本時間14日朝、イスラエルが米国の自制要請を無視してレバノン・ベイルート南郊ダヒエ地区を空爆し、地元当局によると2〜3人が死亡、15〜20人が負傷しました。これに対しイランの精鋭部隊・革命防衛隊(IRGC)は同日夜、イスラエル北部のラマトダビド空軍基地に向け弾道ミサイルを発射。4月8日の停戦以降で初とされる直接攻撃となりました。さらに日本時間15日未明には、イスラエルがイラン中西部へ大規模な報復攻撃を行ったと伝えられ、停戦後では最も深刻な交戦に発展しています。トランプ大統領はイスラエルの空爆を「起きるべきではなかった」と異例の表現で非難しつつ、「合意成立はあと数時間」「(イスラエルは)失敗するな」と署名続行を主張し、遅れは「数時間」にとどまると説明しました。一方、イランの交渉責任者ガリバフ氏は空爆を強く批判し、「米国には約束を果たす意思か能力が欠けている」と不信感を示しています。覚書はホルムズ海峡の即時再開、米軍によるイラン港湾封鎖の解除、約250億ドルの凍結資産解放、石油制裁の免除、60日間の停戦延長などが柱で、核問題は署名後の協議に先送りされる建付けです。署名はサウジアラビアが主催する「電子署名」方式が想定され、仲介役はパキスタンが担うと報じられていますが、現時点では成立の確証はなく、土壇場での白紙化リスクが改めて意識されます。
出典: NBC News / Al Jazeera / NPR
週明けの市場、「和平プレミアム剥落」と「地政学リスク再燃」の綱引き — 原油は3月初旬以来安値圏から反発を警戒、ドル円は160円高止まり
週末の応酬激化を受け、週明けの市場は方向感を探る展開になりそうです。原油はこのところ和平期待で水準を切り下げており、北海ブレントは13日(11日終値ベース)に一時1バレル86.5ドルを割り込み、3月初旬以来の安値をつけました。2026年の高値からは約2割安の水準です。しかし、週末に中東情勢が再び緊迫したことで、剥落してきた地政学プレミアムが再び上乗せされるとの警戒も浮上しています。ホルムズ海峡の再開が覚書通り実現すれば供給不安は和らぐ一方、署名が流れれば逆方向に振れかねず、原油は神経質な値動きが続きそうです。為替では、ドル円が約160円と高止まりしています。本日から始まる日銀会合での利上げ観測が円の下支え材料となる半面、有事のドル買いが重しとなる構図です。東京市場は本日から日銀会合、週内には米FOMCとG7エビアン・サミットと重要イベントが集中しており、週明けは様子見と警戒が交錯し、変動が大きくなりやすい地合いです。
出典: CNBC / TIME
日銀、本日から2日間の会合 — 16日に1.0%へ約31年ぶり利上げが大勢、焦点は「利上げ後」の道筋とキャリー巻き戻し
国内最大の注目イベント、日銀の金融政策決定会合が本日から2日間の日程で始まります。市場では16日に政策金利を0.75%から1.0%へ引き上げるとの見方が大勢で、実現すれば1995年以来およそ31年ぶりの1.0%水準となります。焦点は利上げそのものより、その先の道筋です。市場は年内にさらに2回程度の追加利上げと、最終到達点(ターミナルレート)が2%前後になる展開を織り込みつつあります(バンク・オブ・アメリカは2027年末までに1.75%への到達を予想)。仮に利上げを起点に円高へ転換すれば、低金利の円を借りて高利回り資産に投じる「円キャリートレード」の巻き戻しを誘発し、世界の流動性やリスク資産に波及するとの懸念もくすぶります。今会合では、国債買い入れの減額計画の点検も予定されています。なお植田総裁は感染症の治療で入院中のため会合を欠席する見込みで、決定後の記者会見は内田眞一副総裁が代行します。約160円のドル円相場が修正に向かうかどうかが、当面の最大の関心事です。
出典: Yahoo Finance / Reuters/Investing.com
FOMCは16〜17日、ウォーシュ新議長の初采配 — 据え置きはほぼ確実、ドットプロットの「中立転換」が最大の焦点
米国では16〜17日にFOMC(米連邦公開市場委員会)が開かれます。ケビン・ウォーシュ新議長にとって初の会合で、政策金利は3.50〜3.75%での据え置きが市場で99.5%織り込まれており、金利水準そのものに波乱はないとの見方です。市場が注視するのは同時公表される経済見通し(SEP)と政策金利の分布図(ドットプロット)です。これまで残っていた緩和(利下げ)バイアスが、どこまで明確に中立スタンスへ転換するかが最大の見どころで、年内の利下げ観測が消滅し、初回利下げの想定が2027年へ後ろ倒しになるとの見方も出ています。年内は据え置きが続くとの見通しが大勢です。加えて、初登板となるウォーシュ議長の記者会見でのトーンも、今後の金利観を左右する材料として注目されます。日銀と同じ週に開かれる「中銀ウィーク」の山場であり、日米の金融政策の方向性の差が、ドル円相場や世界の株式・債券市場に与える影響が意識される局面です。
出典: Chase / Seeking Alpha
G7エビアン・サミット、本日開幕 — トランプ氏は誕生日のUFC観戦後に渡仏、対NATO・対中・イランで同盟国と火種
フランス・エビアンで開かれるG7首脳会議が本日15日に開幕し、17日までの3日間の日程で行われます。議題はイラン・ホルムズ和平、ウクライナ、対中通商が柱です。議長国フランスのマクロン大統領は、当初トランプ氏の80歳の誕生日にあたる日曜を開幕日としていましたが、同氏がホワイトハウスでのUFC(総合格闘技)観戦を優先したため、開幕を月曜に後ろ倒しした経緯があります。会議には不協和音も漂います。米国が在欧州のNATO向け航空機・艦艇を大幅に削減する方針を同盟国に通告したことで、欧州側は米国の関与継続を巡る懸念を強めています。経済面では、7月24日に迫る米追加関税の期限や、中国によるレアアース(希少資源)の輸出規制が共通の火種です。包括的な共同声明(コミュニケ)は昨年に続き2年連続で見送られる公算が大きく、分野別の成果文書を積み上げる慎重運営になる見通しです。週末に中東の応酬が激化したことで、和平を巡る議論がサミットの空気を一段と緊張させる可能性があります。
出典: CNBC / European Council / Council on Foreign Relations