朝の号をお届けします。前日まで2日連続で激化していた米・イランの軍事応酬は、一転して和平へ大きく傾きました。トランプ米大統領が予定していた対イラン攻撃の中止を表明し、和平合意が「近日中に署名される」と踏み込んだことで、市場には安堵が広がりました。これを受けて米国株は主要3指数がそろって急反発し、ダウは約930ドル高で5万ドル台を回復しました。一方で同日発表された米5月卸売物価(PPI)は前年比+6.5%と約3年半ぶりの伸びを記録し、インフレ圧力の根強さも改めて確認されました。原油は和平期待で1バレル92ドル前後へ下落し、金は昨年11月以来の安値圏に沈みました。本号は(1)米イラン和平、(2)米国株急反発、(3)米PPI、(4)原油、(5)金の5本立てです。
トランプ氏が対イラン攻撃を中止、和平合意「近日署名」へ — 週末に欧州で調印の可能性
中東情勢は劇的に転換しました。トランプ米大統領は11日、同日夜に予定していたイランへの追加攻撃を取りやめると表明し、和平合意が間近に迫っていると明らかにしました。協議はイラン指導部の最高レベルにまで引き上げられ、すでに承認を得たとしており、署名の日時と場所は近く発表されるとしています。報道によれば、合意は60日間の停戦延長を柱とし、その間にホルムズ海峡を通行料なしで再開、イランが敷設した機雷を除去して船舶の自由通航を認め、イランは原油を自由に売却できるようになります。あわせて核開発の抑制を巡る交渉も継続されます。合意は早ければ今週末にも欧州で署名される可能性があるとされ、イランの準国営ファルス通信はテヘランが合意を承認する公算が大きいと報じました。UAEとイランによる異例の直接協議も伝えられ、緊張緩和への期待が高まっています。ただし海上封鎖は署名が完了するまで全面的に維持される構えで、約3カ月半にわたり世界のエネルギー供給の約2割が通るホルムズ海峡が実質閉鎖されてきた状況が、本当に解消に向かうかは予断を許しません。
出典: NPR / 2026 Iran war ceasefire(Wikipedia)
米国株が急反発、ダウ約930ドル高で5万ドル回復 — 和平期待でハイテク主導
11日の米国株式市場は、対イラン攻撃の中止と和平合意接近の報を好感し、主要3指数がそろって大幅高となりました。ダウ工業株30種平均は前日比およそ930ドル高(+1.86%)の5万0,848.75ドルと、節目の5万ドル台を回復しました。S&P500種株価指数は+1.75%と7,400ポイントにあと一歩まで上昇し、ナスダック総合指数は+2.54%と3指数の中で最も大きく値を戻しました。前日まで続いた中東緊迫による下落の反動に加え、供給途絶リスクの後退観測がリスク選好を一気に押し上げました。業種別では、ハイテク・資本財・素材が上昇を牽引した一方、和平による原油安が意識されたエネルギーや、ディフェンシブ性の高い生活必需品・不動産は下落し、明確な物色のローテーションが見られました。半導体・AI関連には前日までの急落からの買い戻しが入りました。もっとも、後述する根強いインフレ指標もあり、株価の上値追いには慎重な見方も残ります。
出典: TheStreet / Trading Economics
米5月PPIは前年比+6.5%と約3年半ぶり高水準 — ガソリン卸売価格が23.4%急騰
米労働省が11日発表した5月の生産者物価指数(PPI、最終需要)は、前月比+1.1%と市場予想(+0.7%)を大きく上回りました。前年同月比では+6.5%と、2022年11月(+7.4%)以来およそ3年半ぶりの高い伸びとなり、卸売段階でのインフレ圧力の根強さが鮮明になりました。変動の大きい食品・エネルギーを除くコアPPIは前月比+0.4%と、予想(+0.5%)はわずかに下回りました。上昇の約8割は最終需要財(+2.8%)が占め、なかでもガソリンの卸売価格が23.4%と急騰したことが主因です。サービス価格も+0.3%と底堅く推移しました。前日の5月消費者物価(CPI)に続く高インフレの確認で、市場は年内利下げをほぼ織り込まず、12月の追加利上げ観測も維持しています。米10年債利回りは4.5%台で高止まりしました。来週16〜17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)は、ウォーシュ新議長の下で政策金利の据え置きが見込まれています。それでも株式市場が上昇したのは、和平期待がインフレ警戒を上回ったためです。
出典: U.S. BLS / CNBC
原油はブレント92ドル前後へ下落 — 2026年高値から約2割安、ホルムズ通航再開を織り込む
原油相場は和平観測を受けて軟調に推移しました。北海ブレント原油は11日、1バレル92ドル前後まで下落し、米・イランの新たな攻撃応酬への警戒と、ホルムズ海峡の通航量が増加しつつあるとの観測が綱引きとなりました。世界の原油価格は、米・イランの恒久的な停戦合意への楽観が広がるなかで、2026年の高値からおよそ2割下落した水準にあります。合意が成立すればホルムズ海峡の通航が解放され、止まっていた原油輸送が再開するとの期待が、供給途絶プレミアムの剥落を促しています。合意は早ければ今週末にも欧州で署名される可能性があり、イランのファルス通信はテヘランが承認する公算が大きいと伝えました。UAEとイランの直接協議も緊張緩和観測を後押ししています。一方で、署名が完了するまで海上封鎖は維持されるため、実際の供給回復には時間を要するとの慎重論も根強く、和平の進展度合いに価格が一喜一憂する展開が続いています。
出典: Trading Economics / CNBC
金は1トロイオンス4,080ドル台へ下落、昨年11月以来の安値 — リスク選好で逃避需要後退
金相場は続落し、1トロイオンス4,080ドル前後と2025年11月以来およそ7カ月ぶりの安値圏に沈みました。前日の4,146ドルから水準を切り下げています。和平期待によるリスク選好の高まりで安全資産としての逃避需要が後退したことに加え、米長期金利が4.5%台で高止まりし、ドルが底堅く推移したことが、利息を生まない金の重荷となりました。投資家は同日に発表された強い米PPI、前日のECB利上げ、そして中東情勢の転換を消化しています。地政学リスクが高まっても資金が金ではなく米ドルに向かう「有事のドル買い」の構図が続き、金が買われにくい逆説的な地合いが維持されています。もっとも、各国中央銀行による継続的な金購入や、米連邦準備制度(FRB)の独立性を巡る中長期的な懸念は、引き続き相場の下支え要因とみられています。年初の最高値圏(5,500ドル超)からの調整が一巡すれば、再び上値を試す余地もあるとの見方が残ります。
出典: CNBC Select / Trading Economics