週末夜の号をお届けします。土曜日で東京・ニューヨークの両市場とも休場のため、新たな相場データはありません。もっとも、来週は相場を動かしかねない大型日程が集中します。15〜17日にはフランス・エビアンで主要7カ国(G7)首脳会議が開かれ、長らく交渉が続いてきた米・イランの和平合意の署名舞台になるとの観測が強まっています。同じ16〜17日には日銀の金融政策決定会合と米連邦公開市場委員会(FOMC)が重なる「中銀ウィーク」を迎え、日銀は31年ぶりの高水準への利上げが見込まれます。一方で、和平交渉の蚊帳の外に置かれたイスラエルの動向が最大の不確定要素として残ります。本号は週明けの備えとして、(1)G7エビアン・サミット、(2)日銀の利上げ観測、(3)和平の波乱要因としてのイスラエル、(4)来週の市場展望の4本立てでお伝えします。
G7サミットが15日開幕へ — 米イラン和平の署名舞台に、エネルギー安全保障と「マクロ不均衡」も焦点
来週15〜17日、フランス・レマン湖畔のエビアンでG7首脳会議が開かれます。フランス・英国・カナダ・ドイツ・イタリア・日本・米国の各首脳と欧州連合(EU)が顔をそろえ、ブラジルやインド、韓国などの新興国も一部討議に招かれます。市場が最も注目するのは、このサミットが米・イランの和平合意の署名の場になるとの見方です。トランプ政権高官は合意成立の確率を「8〜8割5分」とし、覚書(MOU)にはホルムズ海峡の全面再開やイラン産原油の港湾封鎖解除が盛り込まれていると説明しています。ただし署名の時期・場所はなお未定とされ、楽観は禁物です。経済面では、議長国フランスが「中国の過剰生産・米国の過剰消費・欧州の過少投資」という世界的なマクロ不均衡の是正を主要議題に掲げ、電力の安定供給や重要鉱物、サプライチェーンの多様化といったエネルギー安全保障も話し合われる見通しです。2月以降の中東情勢が招いた輸送コスト高や食料安全保障、インフレ再燃が議論の通奏低音となりそうで、合意の行方は週明けの原油・為替相場を大きく左右します。
出典: Yahoo Finance / Bloomberg / Council on Foreign Relations
日銀、16日に31年ぶり高水準へ利上げ観測 — 植田総裁は入院で欠席、内田副総裁が会見へ
来週16〜17日の日銀金融政策決定会合では、政策金利を現行の0.75%から1.0%へ引き上げ、1995年以来となる約31年ぶりの高水準に踏み切るとの見方が市場で広がっています。背景にあるのは、中東情勢に端を発したエネルギー価格の高騰と、円安による輸入コストの上昇、人手不足を背景とした賃金・物価の上振れリスクです。日銀は今後も利上げを続ける姿勢を強調するとみられ、ロイターの調査では年内10〜12月にもう一段、1.25%への追加利上げを見込むエコノミストが多数を占めています。今会合では異例の事態も生じています。植田和男総裁が肝のう胞の感染症治療のため約2週間入院しており、16日に終わる2日間の会合を欠席する見通しです。会合後の記者会見は内田眞一副総裁が総裁に代わって臨むとされ、新体制の米FOMCと並んで、説明の細部に市場の注目が集まります。利上げが実現すれば日米金利差の縮小観測から円買い材料となり得ますが、すでに相応に織り込まれているだけに、声明や会見が示す「次の一手」への含みが相場の方向を決めそうです。
出典: Investing.com / Reuters / Yahoo Finance
和平の最大の波乱要因はイスラエル — ネタニヤフ氏は追加攻撃を志向、トランプ氏は「孤立する」と警告
署名間近とされる米・イラン和平の最大のリスクは、交渉の当事者に含まれていないイスラエルの出方です。ネタニヤフ首相はイランへの攻撃をいったん停止したものの、停戦そのものは明言せず、「砲火が再開すれば力をもって応じる」と強硬姿勢を崩していません。イランの軍事力をさらに削ぐため、追加攻撃を選好していると伝えられます。これに対しトランプ大統領は、攻撃を続ければイスラエルが国際的に孤立すると重ねて警告し、「ビビ(ネタニヤフ氏の愛称)、気をつけないと独りになるぞ」と強い言葉で自制を促したと報じられています。イラン側は「米国が誠実であるかぎり和平協議を進めることに問題はない」とする一方、核開発の凍結や濃縮ウランの引き渡しといった核心部分では双方になお隔たりが残ります。エビアンでの合意が実現すればホルムズ海峡の正常化期待から原油の一段安につながり得ますが、イスラエルの単独行動や交渉の決裂となれば、剥落しつつある地政学プレミアムが急速に巻き戻すリスクをはらみます。週明けにかけては合意の進展と同時に、こうした下振れシナリオにも目配りが必要です。
出典: TIME / CNN
来週の市場展望 — ドル強気が約1年4カ月ぶり水準、原油は2カ月ぶり安値で中銀ウィークへ
週明けの市場は、地政学・金融政策・首脳外交が一度に交錯する難しい局面を迎えます。為替市場では、米国のインフレ高止まりと年内利下げ観測の後退を背景に、投資家のドルに対する強気度が2025年2月以来およそ1年4カ月ぶりの高水準まで高まっています。一方で原油は、和平接近を映してブレントが1バレル87〜88ドル前後と約2カ月ぶりの安値圏に沈み、2026年の高値からは2割超下落しました。先週の米国株は和平期待を支えに上昇基調となったものの、5月の卸売物価指数(PPI)が前年比6.5%と高インフレを示したことで利上げ警戒がくすぶり、月間ではなお下落圏にとどまっています。来週はG7での和平署名の有無に加え、FOMC(新議長ウォーシュ氏の初会合でドットプロット廃止観測)と日銀の利上げが同じ週に集中します。和平が成立して原油安が進めばインフレ懸念の後退でリスク選好が強まる半面、中銀の引き締め姿勢が改めて意識されれば変動が拡大しやすく、強弱の材料が綱引きする展開となりそうです。週前半の値動きには注意が必要です。
出典: Bloomberg / CNBC
※ 本号は土曜日で主要市場が休場のため、株価・為替などの新規データはありません。米・イラン和平交渉やG7、日米中銀会合の結果は、進展があり次第、明朝(06:00号)以降で改めて取り上げます。