週末の昼の号をお届けします。土曜日で東京・ニューヨークの両市場とも休場のため、新たな相場データはなく、足元で新規の重要ニュースも限られています。本号では件数を無理に埋めず、来週に控える「中銀ウィーク」を軸に、いま押さえておきたい三つのテーマを先読みでお伝えします。最大の注目は、16〜17日に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)と日本銀行の金融政策決定会合が重なる点です。とりわけ米国では、5月に就任したばかりのウォーシュ新議長が初の会合に臨み、長年の慣行である「ドットプロット(金利見通し分布図)」の廃止に踏み切るとの観測が広がっています。市場では、割高となった大型テック株から金融・資本財などのバリュー株へ資金を移す「循環物色」も鮮明です。海外に目を転じると、ホルムズ海峡の混乱に伴うエネルギー高が、長くデフレに苦しんできた中国の物価をめぐる構図を変えつつあります。本号は(1)FOMCとウォーシュ新議長、(2)米株の循環物色、(3)中国の物価反転の3本立てです。
来週は「中銀ウィーク」、FOMCはウォーシュ新議長デビュー — ドットプロット廃止観測が市場を揺らす
来週16〜17日は、米FOMCと日銀の金融政策決定会合が同じ日程で開かれる「中銀ウィーク」となります。最大の焦点は、5月22日に第17代議長へ就任したばかりのケビン・ウォーシュ氏にとって初の会合となるFOMCです。政策金利は3.50〜3.75%での据え置きがほぼ確実視されており、金利先物が織り込む利上げ確率はごくわずかにとどまります。もっとも市場の関心は金利水準そのものよりも、ウォーシュ氏が政策運営の枠組みをどう変えるかに移っています。同氏は就任前から「フォワードガイダンス(先行きの政策指針)を信じない」と公言しており、今会合で四半期ごとの金利見通しを点で示す「ドットプロット」を廃止するとの観測が強まっています。現行のドットプロットには2026年内に0.25%の利下げ1回分がなお残っていますが、5月の卸売物価指数(PPI)が前年比6.5%と高インフレを示すなか、この見通しが今回の更新で消える可能性が高いとみられています。市場では年末にかけて「利下げ」より「利上げ」を見込む声すら増えており、枠組み変更と相まってボラティリティ(変動率)の高まりに警戒が必要です。同じ週に日銀も31年ぶりの高水準への利上げが取り沙汰されており、日米の金融政策の行方が週明け以降の相場を左右します。
出典: Chase(FOMCプレビュー) / IndexBox
米株で「テック離れ」の循環物色が鮮明 — 金融・資本財・エネルギーへ資金シフト、半導体は調整
米国株式市場では、これまで相場を牽引してきた大型テクノロジー株から、出遅れていたバリュー(割安)株へ資金を移す「循環物色(セクターローテーション)」が鮮明になっています。今週はナスダック総合指数が軟調に推移する一方、ダウ工業株30種平均が相対的に底堅く、両指数の方向感が分かれる場面が目立ちました。背景には、2025年に急騰した人工知能(AI)関連株を中心に「株価が割高だ」との見方が広がり、AIブームの過熱感が和らいできたことがあります。資金の受け皿となっているのは金融・資本財(インダストリアル)・生活必需品・エネルギーといった業種で、足元では金融セクター上場投資信託(ETF)が堅調に買われる一方、半導体関連ETFは2%超下落する日も見られました。投資家がポートフォリオの偏りを見直し、バリュエーション(投資指標)の高い成長株への依存度を下げようとしている動きと言えます。来週の中銀ウィークで金利の先高観が改めて意識されれば、将来の利益を高く評価される成長株には逆風、配当や足元の収益を重視するバリュー株には追い風となりやすく、この資金の流れが続くかが当面の注目点です。
出典: Nasdaq / Stock Market Watch
中国でデフレ圧力が後退 — ホルムズ発のエネルギー高でPPIが約4年ぶり高水準へ
中東情勢は、長年デフレ(物価下落)に悩んできた中国経済にも思わぬ影響を及ぼしています。ホルムズ海峡をめぐる混乱でエネルギー価格が世界的に上昇したことが、中国の根強い物価下押し圧力を和らげる方向に働いているためです。エコノミストの間では、メーカーが高い投入コストを価格に転嫁する形で、中国の5月の生産者物価指数(PPI)が前年比で約4年ぶりの高い伸びとなったとの見方が出ています。消費者物価指数(CPI)も小幅ながらプラス圏での推移が見込まれ、これまでの「物価下落の連鎖」からの転換点となるか注目されます。輸出は引き続き中国経済の明るい材料で、AI関連技術や再生可能エネルギー製品への世界的な需要を背景に、5月の対米輸出は約5年ぶりの高い伸びを記録しました。もっとも、エネルギー高によるコスト主導の物価上昇は、国内需要の本格回復を伴うものではなく、不動産市場の低迷など構造的な課題は残ります。仮に来週、米・イランの和平合意が成立してエネルギー価格が一段と下落すれば、足元の物価反転が一時的なものにとどまる可能性もあり、地政学と物価の連動を見極める必要があります。
出典: CNBC / Oxford Economics
※ 本号は土曜日で主要市場が休場のため、株価・為替などの新規データはありません。米・イラン和平交渉や原油・金相場の最新情勢は、前号(06:00号)でお伝えした内容から大きな進展があり次第、次号(22:00号)で改めて取り上げます。