おはようございます。本号は、昨晩の米国市場と中東情勢を中心にお伝えします。3日の米株式市場は、前日までの最高値ラリーから一転して反落しました。イランがクウェートやバーレーンなど湾岸諸国へミサイルを発射し、停戦の先行きに対する不安が再燃したことで、原油が上昇し、株式には利益確定売りが広がりました。一方、取引終了後に決算を発表したブロードコムはAI半導体の好調を背景に時間外で上昇し、明暗が分かれています。本号では、(1)中東情勢の再緊迫と原油、(2)米株の反落、(3)ブロードコム決算、(4)米5月雇用統計を控えた労働市場、(5)ECBの利上げ観測、(6)日本市場と円相場、の6本を取り上げます。
中東情勢が再び緊迫、イランが湾岸諸国へミサイル — クウェート空港に着弾し1人死亡、原油は1%超上昇
2月末に始まった戦闘の停戦をめぐる米イラン交渉が膠着するなか、3日に湾岸地域で軍事的緊張が再燃しました。米中央軍(CENTCOM)によると、イランはバーレーンやクウェートなど周辺国に向けて弾道ミサイルを発射し、バーレーンに向かった3発は迎撃され、クウェートに撃たれた2発は途中で失速・分解したと伝えられています。クウェートの空港施設にはミサイルが着弾して少なくとも1人が死亡し、米軍は民間船舶やクウェート駐留米軍を狙ったドローンを撃墜したほか、ホルムズ海峡近くのゲシュム島への攻撃で応戦しました。これを受けて原油は時間外で1%超上昇し、北海ブレントは1バレル97ドル近辺、米WTIも95ドルを上回る水準で推移しています。米国とイランの和平協議は依然として明確な進展がみられず、ルビオ米国務長官は「核活動の放棄が制裁緩和の条件」と議会で証言しました。7日にはOPECプラスの閣僚会合を控え、需給と地政学の綱引きが続いています。
出典: Rappler / RFE/RL
米株は最高値から反落、ダウ▲1.2% — 地政学リスクと原油高で利益確定売り、債券に逃避買い
3日のニューヨーク株式市場は主要指数がそろって下落し、前日までの連日の最高値更新から反落しました。終値ベースでダウ工業株30種平均が約1.2%安、小型株中心のラッセル2000も約1.25%安と1%を超える下げとなり、ナスダック総合指数は約0.9%安、S&P500種株価指数は約0.7%安で取引を終えています。イランの湾岸諸国へのミサイル攻撃で中東情勢への警戒が一気に高まり、原油高と米国債への逃避買い(利回り低下)が同時に進む典型的なリスクオフの地合いとなりました。前日まで相場を牽引していたソフトウエアや半導体など値がさハイテク株に持ち高調整の売りが出やすく、通信・金融も軟調でした。最高値圏での過熱感が意識されていただけに、地政学要因が利益確定のきっかけとなった面もあります。
出典: Yahoo Finance / Bloomberg / TheStreet
ブロードコム決算、売上高222億ドル(+48%)・AI半導体143%増 — 次期見通しも強気、時間外で約4.7%高
半導体大手ブロードコムは3日の取引終了後、2026会計年度第2四半期(5月3日まで)の決算を発表しました。売上高は前年同期比48%増の約222億ドル、非GAAPベースの1株利益は2.44ドルとなり、市場予想を上回りました。注目のAI半導体売上高は143%増の約108億ドルと、会社側が示していた107億ドルの見通しを上回っています。ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)向けのカスタムAIアクセラレーター(専用演算チップ)とAIネットワーク機器の需要が成長を牽引しました。第3四半期の売上高見通しは前年同期比84%増の約294億ドルと強気の内容で、発表を受けて株価は時間外取引で一時約4.7%上昇しました。AIブームの恩恵を象徴する決算で、前日からの株安局面で数少ない明るい材料となっています。もっとも株価収益率(PER)は高水準にあり、需要鈍化への警戒も残ります。
出典: StockTitan(Broadcom IR) / The Motley Fool
米5月ADPは+12.2万人で予想超え — 5日の雇用統計は+8万人予想、FOMC(6/16-17)を前に労働市場を見極め
雇用面では、3日に発表された5月のADP全米雇用報告(民間部門)が前月比12万2,000人増となり、市場予想(約11万人増)を上回りました。4月の10万5,000人増から伸びが加速し、2025年1月以来の強さです。雇用の増加が一部の業種に偏っていた前月までと異なり、ADPが集計する10業種のうち8業種で増加し、企業規模や地域を問わず広がりがみられた点が特徴です。教育・医療が5万7,000人増で最も多く、運輸・流通・公益が3万6,000人増で続きました。市場の関心は5日朝(米国時間)に発表される5月の雇用統計(非農業部門雇用者数)に移っており、ウォール街の予想は約8万人増、失業率は4.3%で横ばいとされています。6月16〜17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、労働市場の底堅さと利下げ余地を見極める重要な手がかりとなります。
出典: CNBC / Kiplinger
ECB、6月11日の利上げ観測ほぼ確実に — 5月HICP+3.2%、エネルギー+10.9%、預金金利2.25%へ
欧州中央銀行(ECB)の6月11日の理事会を前に、市場では0.25%の利上げがほぼ確実視されています。5月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値が前年同月比+3.2%と4月の+3.0%から加速し、2023年9月以来の高い伸びとなったことが背景です。中東情勢を映してエネルギー価格が前年比10.9%上昇し、食料・エネルギーを除くコア指数も4月の+2.2%から+2.5%へ切り上がりました。短期金融市場は6月会合での利上げを9割超の確率で織り込んでおり、実現すれば預金ファシリティ金利は2.00%から2.25%へ引き上げられます。欧州委員会は2026年のユーロ圏インフレ見通しを1.9%から3.0%へ上方修正しており、原油高ショックが物価の前提を変えつつあります。市場はラガルド総裁が今後の利上げ継続を示唆するかどうかにも注目しています。
出典: Morningstar / Crypto Briefing
日本市場、最高値圏で迎える朝 — ドル円159円台、日銀6月利上げ観測なお根強く、海外株安が重し
国内市場は、前日に日経平均株価が史上初の68,000円台へ乗せた最高値圏で4日の朝を迎えます。もっとも、昨晩の米株反落と中東情勢の再緊迫を受け、東京市場の寄り付きには利益確定の売りが出やすく、半導体・電子部品など値がさハイテク株を中心に上値の重い展開が予想されます。為替はドル円が1ドル159円台での推移が続き、政府・日銀による円買い介入への警戒と、追加利上げ観測がせめぎ合う構図です。植田和男総裁が3日の講演で「適切なペースで利上げを続ける」と前向きな姿勢を示したことを受け、市場は6月16〜17日の金融政策決定会合での追加利上げを高い確率で見込んでいます。中東発の原油高が国内の物価を押し上げ、日銀の利上げ判断を後押しする一方、世界景気の不透明感が重しとなる難しい局面です。海外の地政学リスクと国内金融政策の両にらみで、神経質な値動きが続きそうです。
出典: Mitrade / 日本経済新聞