本号は、東京時間の反落と前日の米国市場の動きを軸に整理します。最大の焦点は、午前に155円台まで急伸した円が再び159円台後半まで売り戻され、日経平均も最高値圏から反落したことです。海外では、米イランの交渉が一段と暗転してホルムズ海峡の閉鎖継続が警告される一方、米5月のISM製造業景況指数が約4年ぶりの高水準へ上振れ、地政学と底堅い実体経済が綱引きする構図が続いています。本号では、(1)円の売り戻しと東京市場の反落、(2)日本の1〜3月期設備投資の足踏み、(3)米ISM製造業PMIの上振れ、(4)米国株の底堅さとAI物色、(5)米イラン交渉の暗転と原油高、の5本を取り上げます。
円、155円から159円台後半へ売り戻し — 日経平均は66,734円へ反落、投機筋の円売り越しが介入前水準を突破
2日の東京市場では、財務省の円買い介入で午前に一時155円台まで急伸したドル円が、午後にかけて1ドル159円70銭前後まで再び売り戻されました。介入直後の円高水準から短期間でほぼ元の円安圏へ戻った形で、ヘッジファンドなど投機筋のドルに対する円の売り越し幅は、介入前の水準を上回るまで積み上がったと報じられています。日米の大幅な金利差を背景とした円売り圧力の根強さがあらためて意識され、市場では介入効果の持続性への懐疑が強まっています。株式市場では、前日に66,954円の最高値圏で引けた日経平均株価が反落し、終値は前日比200円09銭安の66,734円24銭となりました。東証株価指数(TOPIX)も16.46ポイント安の3,924.24で取引を終えています。市場の関心は、6月15〜16日の日銀金融政策決定会合での追加利上げの有無と、その後の為替の方向感に移りつつあります。
出典: LIMO / 日本経済新聞
1〜3月期の設備投資はほぼ横ばい — 企業収益は底堅さ維持も、中東情勢の不確実性で投資先送りの観測
財務省が公表した法人企業統計によると、2026年1〜3月期の設備投資(ソフトウェアを含む)は前年同期比でほぼ横ばいにとどまりました。企業収益自体は好調を維持しているとされる一方、投資の伸びを欠く結果となっています。民間調査機関は、振れの大きい統計である点に留意が必要としつつ、中東情勢の緊迫化に伴う先行き不透明感の高まりを受けて、年度末にかけて予定していた設備投資を先送りする企業が相次いだ可能性を指摘しています。エネルギー価格の高止まりや為替の急変動が続くなか、企業がキャッシュを手元に厚く持ちつつ投資判断を慎重化させている構図がうかがえます。設備投資は国内総生産(GDP)を押し上げる内需の柱であり、好業績が投資や賃金へ環流するかどうかは、日本経済の自律回復力を測るうえで引き続き重要な論点です。
出典: ニッセイ基礎研究所 / 財務省
米5月ISM製造業景況指数が54.0へ上振れ — 約4年ぶり高水準、ただし価格指数82.1で物価圧力は残存
米サプライマネジメント協会(ISM)が1日発表した5月の製造業景況指数(PMI)は54.0となり、前月の52.7から1.3ポイント上昇しました。2022年5月以来の高い水準で、製造業の活動拡大は5カ月連続となります。新規受注指数は56.8へと2.7ポイント上昇し、需要の回復基調が鮮明になりました。一方、仕入れ価格を示す価格指数は82.1と前月から2.5ポイント低下したものの、依然として高水準にとどまり、エネルギーや資材コストの上昇圧力が続いていることを示しています。雇用指数は48.6と改善したものの、なお節目の50を下回りました。実体経済の堅調さと根強い物価圧力が併存する内容で、米連邦準備制度理事会(FRB)が早期利下げに動きにくい状況を裏づけるデータと受け止められています。地政学リスクが意識されるなかでも米製造業が底堅さを保っていることは、世界景気にとって下支え材料となります。
出典: PR Newswire / ISM / ISM
米国株は最高値圏で底堅く — イラン報道で一時動揺もトランプ氏の融和発言で持ち直し、AI物色続く
前日(6月1日)の米国市場は、月初から神経質な展開となりました。イランの交渉チームが仲介国を通じた米国との協議を停止したとの報道を受けて取引開始直後は売りが先行し、原油先物が急伸したことから主要株価指数は下げる場面がありました。もっとも、トランプ大統領がイスラエルのネタニヤフ首相との電話会談を「非常に生産的だった」と表現し、レバノンの首都ベイルートへの地上部隊投入を否定したことで、原油の上げ幅は縮小し、株式市場は最高値圏へ持ち直しました。前週末に米主要3指数がそろって史上最高値を更新した流れを引き継ぎ、エヌビディアのPC向けチップ参入を契機としたAI・半導体関連への物色も相場を下支えしています。地政学ヘッドラインに振らされやすい地合いながら、AI投資の長期テーマと底堅い企業業績への期待が、株式市場の下値を支える構図が続いています。
出典: Yahoo Finance / heygotrade
米イラン交渉が一段と暗転 — イランが対話停止とホルムズ閉鎖維持を表明、原油はWTI92ドル・Brent95ドル前後へ
米国とイランの停戦・核交渉が一段と暗転しています。イラン側は、イスラエルによるレバノンでの軍事行動を理由に、仲介国を通じた米国との協議や文書のやりとりを停止すると表明し、ホルムズ海峡の事実上の閉鎖を維持する構えを示しました。イランはレバノンでの停戦を米イラン合意の前提条件と位置づけており、交渉再開の見通しは立っていません。トランプ大統領は交渉について「退屈になった」「どうでもいい」と突き放す一方、ネタニヤフ首相との電話では融和的な姿勢も見せるなど、対応は日替わりで揺れています。原油市場では、供給途絶リスクの再燃を背景に米WTIが1バレル92ドル超、北海ブレントが95ドル前後へ上昇しました。ホルムズ海峡の通航が戦前水準を大きく下回るなか、交渉の停滞はエネルギー価格の高止まりを通じて世界のインフレ経路に上振れ圧力を加え続けます。
出典: The Hill / OANDA