おはようございます。本号は、前夜に出た米5月CPI(前年比4.2%)を消化しつつ、再燃した中東の地政学リスクに揺れた米国市場の一日を中心にお伝えします。米株は原油高と中東警戒を背景に主要3指数がそろって下落して引けました。米・イランの応酬はオマーン湾でのタンカー攻撃へと拡大し、ホルムズ海峡をめぐる緊張が一段と高まっています。一方、コアCPIが市場予想を下回ったことで米長期金利は低下に転じ、株安の中でも下値を支える材料となりました。本号は、(1)米株続落、(2)米・イランのタンカー攻撃、(3)原油相場、(4)米金利と利下げ観測、(5)本日のECB理事会とドル円、の5本立てです。
米株は3指数そろって続落で引け — 原油高と中東警戒、インフレ高止まりで
10日の米国株式市場は主要3指数がそろって下落して取引を終えました。S&P500種株価指数は前日比0.48%安の7,351前後、ダウ工業株30種平均は0.59%安の5万0,572ドル前後、ナスダック総合指数は0.62%安の2万5,520前後で引けています。一方、内需・小型株中心のラッセル2000は0.41%高と逆行高となり、物色の入れ替わりがうかがえました。同日朝に発表された5月CPIが前年比4.2%と約3年ぶりの高い伸びを示し、インフレの高止まりが意識されたことに加え、米・イランの軍事的応酬の激化を受けた原油高と中東情勢の緊迫が重しとなりました。前週からの半導体・AI関連の荒い値動きが尾を引くなか、エネルギー高がコスト増や追加利上げ観測につながるとの警戒が株式の上値を抑える構図が続いています。市場では、インフレリスクが当面、株価のバリュエーション(割高・割安の度合い)の上限を抑え続けるとの見方も出ています。
出典: TheStreet / Trading Economics
米・イランの応酬がタンカー攻撃に拡大 — 米軍がオマーン湾で船舶を無力化、ホルムズ緊迫
中東情勢はさらに緊迫の度を増しています。米中央軍は、オマーン湾で停船命令に繰り返し従わなかったとしてタンカー「セッテベロ(Settebello)」を攻撃し、航行不能にしたと発表しました。報道によれば同船のインド人乗組員21人が救助された一方、3人が行方不明となっており、インド政府がオマーン当局と連携して対応にあたっているとされます。トランプ米大統領は、夜間にレーダーを持たないイラン側の多数の船舶を「明かりを消して」無力化したとする趣旨の発言を行い、ホルムズ海峡周辺での強硬姿勢を改めて示しました。9日の米軍ヘリコプター撃墜とその報復としての米軍によるイラン領内攻撃、これに対するイランの湾岸米軍基地への報復に続く一連の応酬で、4月に成立した停戦は事実上崩れた状態が続いています。トランプ氏は交渉について「時間がかかりすぎている」と不満を示しつつ、決着がつくまで海上封鎖を続ける構えで、原油の大動脈であるホルムズ海峡の通航は依然として大きく制約されたままです。
出典: Good Morning America / 2026 Strait of Hormuz crisis(Wikipedia)
原油は乱高下のすえまちまち — ブレントは約92ドルで引け、振れ幅大きく
原油相場は地政学ニュースに振らされ、荒い値動きとなりました。北海ブレント原油は日中に1バレル89.61ドルから94.43ドルまで約5ドルの値幅で上下し、終値は91.96ドルと前日終値(94.25ドル)から下落しました。米WTI原油は87.40ドルから90.38ドルのレンジで推移し、89.71ドル前後と前日(88.20ドル)からは小幅に水準を切り上げています。米・イランのタンカー攻撃を含む応酬の激化が供給途絶への警戒を高めて買いを誘う一方、和平交渉への期待や、世界最大の輸入国である中国が在庫を取り崩して輸入を絞り「圧力弁」として働いていることが上値を抑え、方向感の定まらない展開となりました。ホルムズ海峡では米・イランの「二重封鎖」が続き、関係筋によれば日量1,100万バレルを超える供給途絶につながる混乱が依然として相場の最大の材料となっています。ヘッドライン一つで数ドル動く神経質な地合いが続いており、供給不安と和平期待のせめぎ合いが当面の焦点です。
出典: Trading Economics / Investing.com
米長期金利は4.52%へ低下、コアCPI下振れで一服 — 12月利上げ観測は維持
米国債市場では、10日の米10年債利回りが4.52%と前日からほぼ横ばいながら、日中につけた4.55%の高値からは低下しました。同日朝のCPIで、変動の大きい食品・エネルギーを除くコア指数が前月比0.2%と市場予想(0.3%)を下回り、エネルギー高がまだ幅広い物価へ大きくは波及していないとの安心感が広がったことが背景です。総合CPIは前年比4.2%と予想どおりの加速でしたが、コアの下振れを受けて短期金融市場では年内の追加利上げ観測がやや後退しました。もっとも、12月に0.25%の利上げを織り込む見方は引き続き完全に維持されており、年内の利下げは想定されていません。16〜17日のFOMC(ウォーシュ新議長の下での初の本格的な会合)は政策金利の据え置きが広く見込まれています。コア下振れによる金利低下は、原油高と中東警戒で売られた株式相場にとって数少ない下支え材料となりました。インフレ指標の高止まりと地政学リスクのはざまで、金利の方向感は引き続き定まりにくい状況です。
出典: Trading Economics / U.S. BLS
本日11日にECB理事会、ドル円は160円台で介入警戒 — 中銀ウィークの綱引き続く
金融政策が連続して問われる「中銀ウィーク」に入ります。本日11日には欧州中央銀行(ECB)が理事会を開き、預金金利を0.25%引き上げて2.25%とする利上げに踏み切る公算が大きく、市場は9割超を織り込んでいます。イラン紛争に伴う資源高でユーロ圏のインフレが再加速したことが背景で、ラガルド総裁が会見で今後の追加利上げ余地をどこまで示すかが焦点となります。外国為替市場では、ドル円が1ドル160円台と21カ月ぶりの高値圏で推移し、3営業日連続でこの節目近辺にとどまっています。「有事のドル買い」と内外金利差が円の上値を抑えるなか、政府・日銀による円買い介入への警戒が再び強まっています。日本は4月28日〜5月27日に2024年以来となる約730億ドル規模の介入を実施したとされ、片山さつき財務相も「必要なら行動する」と改めてけん制しました。来週は15〜16日に日銀(追加利上げ観測が高まる)、16〜17日に米FOMC(据え置き見込み)が控え、利上げ・据え置きの綱引きが為替の方向感を左右します。なお、安全資産の金は1トロイオンス4,300ドル台と昨年12月以来の水準に沈み、米金利高とドル高が逆風となっています。
出典: Trading Economics(ECB) / 日本経済新聞