経済ニュースダイジェスト

2026/06/02(火)12:00 JST  |  号ID: 2026-06-02-1200

本号は東京時間の動きが中心です。最大の焦点は、節目の160円を割り込んだドル円に対して財務省が再び円買い介入に踏み切り、一時155円台へ急伸させたことです。一方アジア市場では、中国の民間版製造業PMIが市場予想を上回り、官製統計の弱さとの対照が鮮明になりました。欧州ではインフレ再加速を背景に6月11日のECB利上げ観測が固まりつつあり、産油国は6月7日のOPECプラス会合を前に難しい判断を迫られています。本号では、(1)円買い介入と東京市場、(2)中国PMIの官民乖離、(3)ECB利上げと欧州インフレ、(4)OPECプラス会合の綱引き、(5)安全資産での金とビットコインの明暗、の5本を整理します。

財務省が再び円買い介入、ドル円を160円から一時155円台へ — 日経平均は66,954円の最高値圏

ドル円が前日に約21カ月ぶりとなる160円台へ下落したことを受け、財務省は2日の東京時間に再び円買い・ドル売りの為替介入に踏み切ったもようです。報道によれば、介入を受けてドル円は短時間で1ドル155円台まで約3%急伸し、「投機的」「一方的」な動きへの度重なる警告を実力行使に移した形です。4月末以降では複数回目の介入とみられ、5月の累計介入額は約11.7兆円という記録的規模に膨らんでいます。ただし日米の金利差が円安の根本要因である構図は変わらず、市場では介入効果の持続性に懐疑的な見方も根強く残ります。株式市場では、前日の日経平均株価がAI関連を中心としたハイテク高で前日比約0.9%高の66,954円前後と最高値圏で引け、円高への振れにもかかわらず底堅さを保っています。市場の関心は6月15〜16日の日銀金融政策決定会合での追加利上げ観測へと移りつつあります。

中国の民間製造業PMIが51.8で予想超え — 官製50.0との乖離が鮮明、中国株・商品に追い風

中国の民間調査による5月の製造業購買担当者景気指数(PM)は51.8となり、市場予想の51.4を上回りました。前月の52.2からはやや低下したものの、好不況の分かれ目となる50を引き続き上回り、内需や新規顧客、製品の高付加価値化を背景に生産・新規受注がなお堅調であることを示しました。輸出向け受注はわずかに減少しています。注目されるのは、前日に発表された国家統計局(NBS)の官製PMI50.0との乖離です。官製統計が拡大の節目すれすれまで鈍化したのに対し、中小・輸出企業の比率が高い民間版が底堅さを示したことで、製造業の実態を巡る評価が分かれています。市場では今回の予想超えを好感し、香港・本土株や資源価格への追い風になるとの見方が出ています。米中通商を巡る不透明感が続くなか、内需主導の自律回復が続くかが当面の焦点です。

ECBは6月11日に利上げの公算 — ユーロ圏インフレ再加速、仏5月HICPは+2.8%

欧州中央銀行(ECB)は6月11日の理事会で0.25%の利上げに踏み切るとの見方が市場で強まっています。エコノミスト調査では、2026年のイラン情勢に伴うエネルギー高がインフレを押し上げるとして、6月と9月にそれぞれ0.25%の利上げを見込む声が多数を占めます。ユーロ圏の4月のHICP(EU基準消費者物価指数)速報は前年同月比+3.0%へと3月の+2.6%から加速し、その大半をエネルギー価格の上昇が説明しました。直近では、フランスの5月HICPが+2.8%と、天然ガスなどのエネルギー高を背景に高止まりしています。利下げ局面にある可能性すら一時意識されていた状況から一転、物価の上振れがECBを追加引き締めへと押し戻す構図です。米国が利下げを見送る一方で欧州が利上げに向かう金融政策の方向性は、ユーロ相場や域内の長期金利を左右する重要な変数となります。

OPECプラスは6月7日に主要8カ国会合 — 原油急反発と需給安定の綱引き

石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスは、6月7日に第41回閣僚会合を開く予定です。会合は、米イランの停戦交渉が一転して暗転し、原油相場が5月の約2割安から急反発した直後の難しいタイミングで行われます。北海ブレントは足元で1バレル95ドル前後、米WTIも92ドル前後と、ホルムズ海峡の地政学プレミアム再付与で高値圏に戻しています。産油国にとっては、価格上昇局面で増産による収入拡大を狙うか、需給安定を優先して現行の生産方針を維持するかの判断が焦点です。市場では、足元の供給途絶リスクを背景に大幅な追加増産には慎重との見方が優勢ですが、ホルムズ海峡の通航量が依然として戦前を大きく下回るなか、実需フローの回復が遅れれば判断はさらに複雑になります。会合の結果は、原油を起点とする世界のインフレ経路を左右します。

安全資産で明暗 — 地政学再燃でも金は金利上昇に押され、ビットコインが相対優位

中東情勢の再燃で「有事の安全資産」需要が意識されるなか、金とビットコインのパフォーマンスには引き続き差が生じています。金は1月に1オンス5,595ドルの史上最高値を付けた後、紛争激化局面でむしろ下落し、足元では4,700ドル前後で推移しています。背景には、エネルギー高がインフレ再加速観測を呼び、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ期待が後退して実質金利が上昇したことがあります。金は本質的に金利感応度の高い資産であり、「戦争=金高」という従来の図式が今局面では必ずしも当てはまっていません。一方でビットコインは、上場投資信託(ETF)を通じた機関投資家の長期保有層が定着し、ヘッドラインで狼狽売りしにくい構造になったとされ、相対的に底堅い動きが指摘されています。もっとも、両資産とも値動きは荒く、地政学と金利の綱引きが続く局面では、安全資産の選別がこれまで以上に問われます。

過去号